トルクレンチの正しい使い方

カチッとなったら緩めてください

誤った使い方

「カチッ」と音が鳴っても力を緩めない、もしくは念のため2度締め(2回「カチッ」と鳴る)を行うのは誤りです。
アナログトルクレンチはカチッと音がなっても締め付けを継続することが出来ます。そのため、「カチッ以上に締め付けておけば安心」という考えで使うとオーバートルクとなってしまいます。
勢いをつけて締め付けるのもNGです。
勢いよく締め付けると、カチッと同時に力を緩めることが出来ず、オーバートルクとなってしまいます。

正しい使い方

目標トルクに近づいたら、ゆっくり締め付け、カチッと同時に締め付ける力を緩めるのが正しい締め方です。
締付トルクがデジタル表記されていると分かりやすいですが、ゆっくり締め付けても、目標トルクピッタリに締め付けることはとても難しいです。
「念のためもう少し締めておこう」という意識はオーバートルクに繋がりますので、絶対にやめてください

多彩な通知が魅力のアドレックのデジタルトルクレンチ

弊社のデジタルトルクレンチは音以外にも光、振動を使って通知します。通知は適正トルクになったときはもちろん、オーバートルクになったときには警告通知を発することも可能です。
さらに、トルク値をデータで管理できるため、ボルトの締め忘れやオーバートルクになった製品を一目で確認でき、不良品の流出防止に役立ちます

トルクレンチの使い方

トルクレンチとは

トルクレンチは、ねじやボルト、ナットを締め付けた時のトルク値を測定するための測定器です。

ただ締め付けるだけなら、ソケットレンチ=締付工具で十分です。
作業時間を短くするために電動工具を使う場合もあります。

しかしその場合、一部の電動工具を除けば、締め付け時のトルク値を把握することはできません。

一般的に締付作業の場合、トルク指定されるケースがほとんどです。
トルクレンチ=測定器を使う場合、規定トルク値で締め付ける=測定することになります。
トルクの計測は加える力(F)と、回転軸から、力の加わる点までの距離が重要になってきます。

トルクレンチの種類

機械(アナログ)式トルクレンチには非空転式と空転式があります。
一般的によく使われている非空転式は、規定トルクに到達すると「カチッ」と音が鳴りますが、力を緩めないとそのまま力が加わり、オーバートルクとなります

空転式は規定トルクに到達すると空転し、「カチッ」と音が鳴ります。

デジタル式も設定トルクに到達すると、機械式の「カチッ」と同様に、LEDやブザー、バイブ等で知らせてくれ、力を弱める必要があります。ちなみにデジタルトルクレンチに空転式は存在しません

その他にプレート式があります。
プレート式は力を加えるとダイヤルが移動し、ダイヤルが指し示す値を読み取ります。お知らせ機能はありません。

トルクレンチのよくある誤解

機械式トルクレンチ

非空転式のトルクレンチは「カチッ」と音がしたらそれ以上力を加えても力がかからない(いわゆる空転する)、と誤解している方もいらっしゃいますが、それは誤りです

一般的にもっとも多く使われている非空転式のトルクレンチは、「カチッ」と音がしてもそのまま力を加えることが出来ます
ただし空転するタイプもごく一部には存在します。

お使いのトルクレンチがどのタイプかご確認し、空転しないタイプの場合、「カチッ」と音がしたら力を加えないようにする必要があります

カチッってなっても空転しない
正しい使い方
デジタル式トルクレンチ

機械式と同じように「カチッ」とならないから、オーバートルクになると言われる時があります。
勢いよく締め付けてしまい、設定範囲内で締め付けることが出来ず、オーバートルクするようです
もしくは下限上限設定範囲が狭すぎて、オーバートルクする場合もあります。
この場合、恐らく機械式を使用している時もオーバートルクしていると思われます
「カチッ」となっても力は抜けず、そのまま締まってしまうからです。

機械式の場合でも言えるのですが、規定トルク近辺に到達したら、ゆっくり締め付けないとオーバートルクになります
またデジタル式で上下限設定の範囲が狭い場合は、とてもゆっくり締め付けないと、設定範囲に収めるのは非常に難しいです

機械式の場合、締め付けた時のトルク値が分からないためオーバートルクしているかわかりませんが、
デジタル式は締め付け時のトルク値を判定することが出来るので、オーバートルクしていることがはっきりわかります
逆に規定トルク値に到達していない(緩い)場合も判明します。

トルクレンチ使用上の注意点

以下はトルクレンチを使用する上での一般的な注意点です。
詳細やその他の注意点については、必ずトルクレンチに付属している取扱説明書でご確認ください。

電源の入れ方(デジタル式の場合)

デジタル式の場合、電源ON時のトルク値が0点になります。
負荷がかかった状態で電源を入れると、正確に測定することが出来なくなります
平らなところに置いて電源を入れるようにしましょう。

力点線で力を加えましょう

トルクレンチはグリップの力点線に力を加えた時、正確に測定できるように校正されています。
例えば持ち手を長くすれば、締め付ける時の力は通常より弱くて弱くすることが出来ますが、その場合、測定値は正しい測定値にはなりません

力点線より後ろ(長め)を握って締め付けると、設定したトルク値に対してボルトにかかる実際のトルク値は小さくなります
逆に前(短め)を握って締め付けると、設定したトルク値に対してボルトにかかる実際のトルク値は大きくなります

この現象はてこの原理で説明できます。

トルクレンチは、てこの原理を用いて力点線に力を掛けたとき、作用点の検出部が正しく動作するよう調整されています
持ち手とボルト/ナットとの距離が力点線よりも長くなる(離れる)と、支点からの距離が離れてしまいます。
そのため、力点線を握った時よりも小さい力で検出部が動作してしまい、ボルトにかかる実際のトルクは小さくなります

逆に、持ち手とボルト/ナットとの距離が力点線よりも短く(寄る)と、支点からの距離も近づきます。
そのため、力点線を握った時よりも大きい力で検出部が動作し、ボルトにかかる実際のトルクも大きくなります

力点線を意識して握るように心がけましょう

力点線に力を加えた場合の動画
長めに握った時の動画

ゆっくり締め付けましょう

トルクレンチは力点線に力を入れ、「カチッ」と音が鳴った瞬間に設定トルクに到達するように校正されています
設定トルク直前は(「カチッ」と音が鳴る直前)ゆっくり締め付けましょう

勢いをつけて締め付けた場合、「カチッ」と音が鳴っても設定トルクを超え、オーバートルクになります
また、念のためと複数回締め付ける必要もありません。

1度「カチッ」と鳴ったら設定トルクに到達しています。
複数回締め付けた場合もオーバートルクしている可能性が高いです。

デジタル式の場合も同様に、ゆっくり締め付ける必要があります。
ただし、オーバートルクしても警告機能で警告されるので、再度締めなおせば問題ありません。
オーバートルクの程度や角度締めの場合、再締め付け不可の場合がありますので、注意が必要です。

力点線で締め付け、カチッ付近はゆっくりな動画
勢いよく締め付け、オーバートルクする動画

使い終わったら設定トルクを最小にする(機械式の場合)

機械式の場合、使い終わったらトルク設定値を最小にしましょう。
トルク設定値が高いままだと、精度に影響が出る可能性があります

まとめ

以上のように、トルクレンチは誤った使い方をすると、トルク値を正確に測定することができません。
初めて使用するときは、必ず使用するトルクレンチの取扱説明書を読み、正しい使い方で測定するように心がけましょう。

トルクレンチの応用的な使い方

デジタルトルクレンチを使えば、トルク管理はより正確になります。
パソコンやPLCと連携すれば、ポカヨケシステムを構築したり、作業を効率化することが可能になります。
ここからは応用的な使い方を説明します。

無線の利用

無線を利用すれば、リアルタイムにトルク管理やポカヨケを構築することが出来ます。
取得した締付結果データをチェックシート作成や顧客への提出レポートに利用すれば、転記、入力の手間を省くことが出来ます。

また締付結果をリアルタイムにカウントすれば、締め忘れ防止にも役立ちます。

トルクレンチの無線についてはこちらをどうぞ。
チェックシート作成についてはこちらをどうぞ。

設定切り替えは自動で

パソコンと連携し、設定トルクを自動で設定することも可能です。
設定を切り替えることが出来れば、機械式より、使う本数を減らすことが出来ます。

パソコンでの自動設定はこちらをどうぞ。

角度計測の利用

締め付ける時の回転角度を計測すれば、締め終わったボルトを再度締め付けていないか、チェックすることが出来ます。
締め終わったボルトを再度締め付けると、締まっていないボルトが発生します。
角度計測を利用すれば、締め忘れを防ぐことが出来ます。

詳細はこちらをどうぞ。

PLCとの連携

PLCと連携すれば、トルク管理、締付回数カウント以外に、生産設備との連携も可能になります。例えば、適切な締付結果の回数をカウントし、規定回数に到達したら、ベルトコンベアを動かし、次の工程にワークを移動させたりすることもできます。

PLCとの連携についてはこちらをどうぞ。

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